2024年ブラジル買付旅行記【vol.1 – Fazenda Rio Brilhante】

2024.09.04
SHERE

2024年7月22日から13日間、ブラジルへコーヒー豆の買付・視察に行ってきました!

今回はその旅行記として、現地の写真とともに皆さまへ買い付けの様子をお届けできればと思います!

THE COFFEESHOP、初のブラジル・オリジントリップ!

今回のオリジントリップは、独自のセレクトで素晴らしいコーヒーを届けてくれるマイクロインポーター、SYU・HA・RI COFFEE IMPORTSの代表 辻本さんにお声がけいただき、来クロップの買い付けに同行させていただきました。

世界のコーヒー生産量のうち、約1/3を担っているブラジルですが、THE COFFEESHOPにとっても最重要生産国のひとつ。シングルオリジンとして通年1種類は必ずラインナップしているほか、ハウスブレンドのLight MixやDark Mixにも使用しており、全生産国のなかでも一番取扱量の多いオリジンになっています。

コーヒーを生業にする者として、一度は行きたいと思っていたブラジルのコーヒー農園。念願の訪問実現です。

今回のオリジントリップの目的

今回のオリジントリップの主な目的は2つ。

1、今秋〜来春から来年末にかけて使用するロットのカッピングと買い付け

2、すでにTHE COFFEESHOPで実際に取り扱っている農園の視察

特に、去年〜今年にかけてSYU・HA・RIさんから仕入れさせてもらっている農園に行くことができたのはとても嬉しかったです。資料写真を見るのと実際に訪れるのとでは、やはり比べられないほどの違いがあります。

今回のオリジントリップのメンバーは、SYU・HA・RI 辻本さんに加え、大阪からYARD Coffee & Craft Chocolate 中谷さん、長崎からnai 近藤さんとご一緒させていただきました。みなさんほぼ初めましてでしたが、年齢や家族構成が近かったりとすぐに打ち解けられて、新しい仲間ができた気持ちで楽しく旅を共にできました。良い旅には良いメンバーが必要なもの。素晴らしいメンバーに恵まれたことに感謝です!

最初の農園、Cerrado・Fazenda Rio Brilhante

日本からブラジルまでは飛行機を乗り継いで約29時間(実際は出発時にトラブルがありプラス3時間…)、まずは今回のトリップの拠点となるSão Pauloに到着。そこからさらに国内線で1時間、バンに乗り換えて4時間、ようやく辿り着いた最初の農園が、Fazenda Rio Brilhante(ファゼンダ・リオ・ブリジャンテ)です。

Fazenda Rio Brilhanteがあるのはブラジル南西部に位置するCerradoという地域。1,000m前後の標高に平坦な土地が地平線まで続いており、大規模なコーヒー生産に適した一帯です。

訪問した7月は乾季にあたり、赤い土は乾燥していて車で通ると土煙が上がります。太陽は力強く、日中の気温は25℃程度ながら強い日差しが照り付けます。ただ空気がカラッとしているので、気持ちよく過ごしやすい気候でした。

ブラジルのコーヒー農園、と聞くと真っ先に思い浮かぶのが、広い敷地にコーヒーの木が広がる大規模な農園。ここFazenda Rio Brilhanteにはまさしくイメージ通りのブラジルコーヒー農園!という景色が広がっています。

その広さは想像できないほどで、コーヒーの栽培面積は約1,000ha、東京ドームでいうと約212個分の敷地面積を誇ります。農園を運営しているグループ会社全体の所有面積はなんと40,000ha!高台に登ると周囲360°すべてが地平線で、その全てが会社の土地というとんでもない規模の農園です。

農園内は車で案内してもらいましたが、15分走っても道の両脇にコーヒーの木が並ぶ同じ景色が続きます。

Fazenda Rio Brilhanteで生産されるコーヒーの大部分は、チェリーのまま乾燥させるナチュラルプロセスで処理されています。天日乾燥させるためのコンクリートパティオだけでも約10ha、東京ドーム2個分の面積があります。

今年の生産量は60kg×40,000袋になる予定。来年はさらにその倍が見込まれるとのことで、とてつもない規模感です。これぞブラジル大農園!

大規模農園でのコーヒー生産

Fazenda Rio Brilhanteでは大きなロットでコーヒー生産を行っており、栽培品種は一部を除きカトゥアイやムンドノーボなど伝統品種が中心。エリアによって品種を分けて栽培しています。

まだ若い木は樹高が低いですが、ほとんどの栽培エリアの木は3メートルほどの高さで列をなすように整然と植えられています。

コーヒーの木の育成に必要な水は、近くの川の水と雨水をミックスし高台にプールしてあります。ほぼすべてのエリアに灌漑設備があり、45日分の水のストックがあるそうです。

この一帯は川の水資源が豊富で、かつてそこではダイアモンドが獲れたのだとか。それが”Rio Brilhante = 輝く川”という農園名の由来になっています。

チェリーの収穫は、ほぼすべて機械を使って行います。規則正しく並んだコーヒーの木を挟み込むように収穫機を進め、チェリーをこそぎ落としてピックしていきます。

実際に動いている収穫機の上に乗せていただきました。コンベアモーターが回転し、収穫したチェリーを並走するトラックの荷台へ送りこんでいきます。

意外だったのは、思いがけず繊細な作業だということ。収穫機には人が乗り込んでゆっくりとしたペースで運転をし、チェリーを巻き取る強さも熟した実を狙って獲れるよう細かく調整しているそう。機械収穫と聞くと大雑把な印象を持っていましたが、思った以上に人の手で作業しているのだと感じました。

農園にある収穫機は10台。それでも広大な敷地の収穫を終えるのに、3ヶ月かかるそうです。

コーヒーの木に与える堆肥も農園内で作っています。コーヒーの栽培には栄養が多く必要で、基本的には毎年、収穫が終わったタイミングで肥料を撒きます。

堆肥の原料になるのはコーヒーチェリーの果皮(カスカラ)やパーチメント、動物のフンなど。3ヶ月かけて発酵させ、農業用肥料と混ぜて使用します。

写真の一帯には果物が発酵したようなにおいと、昆布?アミノ酸?のようなにおいが混ざりあっていました。

昨今、堆肥を自分たちで作ることは生産国で広がりを見せていて、高騰する肥料価格を調整できたり、産業廃棄物にあたるカスカラを再利用することで環境負荷も軽減できます。ここではチェリーの選別に一度使用した水も堆肥作りに再利用していて、サスティナブルなコーヒー生産への取り組みを感じました。

ドライミルでの乾燥〜選別工程

Fazenda Rio Brilhanteでは、収穫したチェリーを乾燥、脱穀、選別したあと、パーチメントコーヒーから生豆と呼ばれる状態まで加工する設備・ドライミルも所有しています。

コーヒーチェリーはフローターに入れられ比重選別、異物の除去がされたあと、大部分はパティオで天日乾燥させるナチュラルプロセスで処理されています。コンクリートの平らなスペースにチェリーを広げ、ムラが起きないように攪拌させながら9〜12日間かけて乾燥させます。

一部のマイクロロットはすべて天日乾燥で仕上げるそうですが、ほとんどのボリュームロットには機械乾燥も併用します。大型のドラム式乾燥機には一度に240kgのチェリーが入り、より短時間で均一に乾燥させることができます。

ただ、一般的にチェリーの乾燥工程は、ゆっくり時間をかけた方が品質は高くなると言われています。短時間で乾燥を行うとクエーカーという色の薄い欠点豆が多くなり、仕上がりの水分値が安定しないことも。このあたりは、農園ごとに生産のボリュームと品質のバランスをみて調整しているのだと思います。

また、一部のロットは先に果肉をパルパーで除去したあと、水洗発酵させてミュシレージを分解、その後乾燥させるプロセスも行っています(パルプトナチュラルと言っていましたが、ほぼウォッシュドでは?と思いました)。

また、酸素を遮断した状態で発酵させる嫌気性発酵にも取り組んでいますが、まだノウハウの蓄積が追いついておらず、品質はあまり安定していない模様。やはりFazenda Rio Brilhanteの強みは、プロセスによるユニークな味作りというより、安定したクオリティのボリュームロットにあるようです。

乾燥から脱穀を経たコーヒー豆は、機械を使った選別作業に進みます。ここでは光選別機でのカラー選別、比重選別、スクリーン選別などの工程を進みます。中米などで行われている手摘みと比べて、機械収穫は熟度にムラができてしまうので、選別工程は何度も繰り返し行う必要があります。

ここではSYU・HA・RI 辻本さんが農園のクオリティマネージャーと一緒に話をして、選別にかける回数を増やすなど対応を相談していました。こうした細かい作業の指示についても、現地に来て話をする重要性を感じる場面でした。

いざカッピングセッション!

農園からドライミルを視察したあとは、いよいよカッピング!農園に併設のラボにて、ボリュームロット4種類・マイクロロット5種類が並びました。

実際にカップをとってみても、やはりボリュームロットに魅力を感じました。ブラジルらしいナッツ、チョコレート感のなかに芯の通った酸味があり、THE COFFEESHOPのコーヒー、特に深煎りのDark Mixに配合したいようなイメージ。

マイクロロットはまだ収穫がすべて終わっていないこともあり選びきれませんでしたが、追ってサンプルを送っていただくことになっているので、期待して待ちたいと思います。

面白かったのは、一緒にカップをとった辻本さん、中谷さん、近藤さんとも、気に入ったロットが大体同じだったこと。みなさんプロのコーヒーマンとしてきちんと品質評価ができるのはもちろんですが、自分たちのお客様にとってどういうコーヒーが喜ばれるか、という視点が一致したのはなんだか嬉しかったです。

今回カッピングしたFazenda Rio Brilhanteのコーヒーが実際に日本に届くのは2025年の春頃の予定。ニュークロップの入荷はまだ少し先になりますが、先に昨年のロットを皆さんにご紹介できる予定なので、どうぞお楽しみに!

大規模農園ならではの魅力

今回訪問させていただいたFazenda Rio Brilhanteは、これまで僕が訪れたことのある中米の農園と比べると、規模から生産方法まで、何もかもが違っていました。

生産量は少なく、その分スペシャルな品質を重視したコーヒー生産。

対して、一定基準のクオリティを保ちながらの大規模なコーヒー生産。

どちらが良い悪いではなく、目指しているコーヒー、目指しているビジネスが違っているわけです。そしてそれは、それぞれのおかれている環境において、もっとも理想的なコーヒービジネスを目指した結果だと言えます。傾斜の急な中米はボリュームロットに向かないし、標高に恵まれないブラジル・Cerradoで美味しいGeishaを育てるのは難しいのです。

今のスペシャルティコーヒーの潮流を見ると、どちらかと言えばハイクオリティなマイクロロットや、特殊な精製を施したエクスペリメンタルなコーヒーに注目が集まりがちで、ブラジルのボリュームロットは軽視されがちな気がしています。

しかし、安定した価格で世の中にコーヒーが流通するためには、ブラジルのボリュームロットが果たしている役割は極めて重要です。そしてそのコーヒーをより美味しく、よりサスティナブルな生産に改善していくことは、コーヒービジネス全体の底上げに繋がると思っています。

そして、いかに大規模な農園と言っても、あくまで”人の手”でコーヒーを作っているのだ、ということを再認識できました。

それぞれの産地、それぞれの環境の中で働く人たちがいて、彼らが最善を尽くしているからこそ僕たちは美味しいコーヒーを楽しめるわけです。

わかっていても、産地に行くたびにそのことを思い知らされます。そんなことを考えたFazenda Rio Brilhanteへの訪問でした。

ブラジルオリジントリップは、Minas Geraisの中小規模農園への訪問へ続きます。次回の更新もお楽しみに!

WRITER

Daito Hagiwara

THE COFFEESHOP ストアマネージャー・ロースター。

THE COFFEESHOPにて取り扱うすべてのコーヒー豆の仕入れと焙煎・クオリティコントロールを担当。焙煎技術を競う大会であるローストマスターズチームチャレンジ2018に関東Aチームとして出場、優勝。 日々焙煎の研究とコーヒー豆の品質チェックを行う。

毎週水曜日21:00〜Instagram、YouTube、Xスペースでライブ配信中!

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