【ハンドドリップ】なぜお湯は何回かに分けて注ぐのか?抽出時間フェーズごとの味の違いについて ~美味しいコーヒーの淹れ方 講座No.1~

2024.11.13
SHERE

多くの方がチャレンジしやすく、身近な〈ハンドドリップ〉。しかし抽出とはなかなか奥が深いもの…

ということで、より抽出理論を深掘りするハンドドリップ講座を用意してみました。

原理や抽出理論を知識として持っておくと、レシピのアレンジや修正・作成が可能になります。

今回は第一弾!〈なぜお湯は何回かに分けて注ぐのか?〉がテーマです。

こちらの内容は、THE COFFEESHOP公式YouTubeでも公開しておりますので、ぜひ合わせてご覧ください。

お湯の投入回数ごとにコーヒーの味を確認

一般的に、ハンドドリップ抽出はお湯を複数回に分けて注ぎます。

公開されている抽出レシピを確認すると、その多くに1投ごとの湯量が定まっていますが、はたして1投ごとに分量を決める意味は何があるのでしょうか?

今回は6回お湯を注いだ時に、各投入ごとで抽出できる味わいに違いがあるのか、検証してみました。

使用器具・方法は下記の通りです。

抽出検証内容

〈必要なもの〉

・CAFEC Flower Dripper 01サイズ

・Abaca Coffee Paper Filter

・グラス

・コーヒー豆:15g(中挽き)

・お湯:240g(92℃)

〈検証方法〉

お湯を30秒間隔で40gずつ、計6回にわけて注ぎ各投入ごとににグラスで区切って味を確認する

今回は詳細な抽出レシピの組み立てではなく、あくまで投入回数ごとに異なる味が抽出できるのかを確認していきます。

公開中の動画は下記からご覧ください!

味覚も視覚でも違う|お湯の投入回数(フェーズ)ごとに違うコーヒーの味

目視で確認すると、3投目以降から色の違いが顕著にわかりました。

それでは各投入回数ごとに味の結果を確認していきましょう!

・1回目に投入したお湯

→かなり濃度が高く、味が強すぎるので渋みが勝る味わい。味にボリュームがあるため、舌に刺激を感じました。

・2回目に投入したお湯

→1回目よりもかなり酸味が強くなりました。舌の奥に刺激が残り、過抽出のコーヒーを飲んだ時の後味に似ています。

・3回目に投入したお湯

→1〜2投目に比べ、味のボリュームと酸味の印象が落ち着き、やや甘さを感じました。

ただアフターテイストは短いため、物足りない味わいです。

一番右側のカップが1投目。

左向かって投入回数が後半になるごとに、色の変化があることがわかります。

・4回目に投入したお湯

→ここから濃度がかなり薄い!3投目までと明確に味が違います。

淹れてからかなり時間をおいた紅茶のような味わいで、 渋みが強く甘さと酸味を感じられません。

・5回目に投入したお湯

→出涸らしの紅茶のような、より濃度が薄まった結果になりました。

・6回目に投入したお湯

→一番味を薄く感じコーヒー風味のお湯。といったような印象です。

コーヒー本来のいい成分が溶け出してるとは思いませんでした。

POINT|味の変化の境目は明確にある

1〜3投目は濃度感の違いはあるものの、コーヒーらしい成分が溶け出しており、4〜6投目は水っぽさやネガティブな渋みなどが増していった結果となりました。

あきらかに抽出前半と後半で味が異なり、検証レシピの3投目:1分30秒までに、豆本来の個性や美味しい成分が溶け出しているようです。

一般的に、酸味やフレーバーは抽出前半に溶け出しやすく、苦味・渋みは後半から溶け出す傾向が強いとされています。

その定説に沿った味わいが、今回の検証結果でよくおわかりいただけたのではないでしょうか。

ということは、出来上がったコーヒーの味わいを大きく左右するのは『タイマースタートから約1分30秒まで』。

かなり短い時間でコーヒーのいい成分(美味しさ)を抽出する必要があります。

渋みも必要|抽出レシピを作成する際のポイント

上記の結果のように、コーヒーの美味しい成分は『タイマースタートから約1分30秒まで』に多く溶け出すことがわかりました。

ここだけ見ると、1〜3投目のいい成分だけを使用し、あとはお湯で濃度調整を行えば、失敗なく美味しいコーヒーが飲めるのでは?と思う方もいらっしゃると思います。

しかしながら、1〜3投目を合わせたものに加水すると、味がまとまらず物足りない印象になることが多いです。

実際に用意してテイスティングをしましたが、アフターテイストが短く味の余韻が続かないため、濃度は適正でも味に芯がないようなコーヒーに仕上がってしまいました。

ここがコーヒー抽出の面白いところ。

美味しいコーヒーには不要とされがちな『渋み』が、後味の余韻や味に立体感をもたらすために必要な要素になるからです。

料理の世界で焦げによる苦味で味に深みを出す技法と似ており、コーヒーにおいては『どの成分をどのような割合で抽出するのか』が大きなレシピ調整のポイントになると思います。

出来上がりの味わいごとにおすすめの投入回数調整方法は、以下を参考にしてみてください。

①酸味やフレーバーをメインに、爽やかさのあるコーヒーを淹れたい時:

できるだけ約1分30秒までにお湯の半分以上を使用して抽出し、後半の投入で濃度調整するイメージ。

1投目よりも2投目で湯量を増やし、酸味成分の溶け出しを促進する。

②甘さを感じバランスのいいコーヒーを淹れたい時:

約1分30秒までに3回程度、毎回同じくらいの量のお湯を注ぎ、甘さ・酸味・フレーバーの強度を整えるようなイメージ。

抽出後半の湯量が多くても、あまり投入回数を増やさずに注ぎ切ることがポイント。

③しっかりとしたボディ感・深煎りのコーヒーを美味しく淹れたい時:

→抽出時間を3分程度に抑えつつ、6回程度毎回同じくらいの分量でお湯をわけて注ぐ。

1投目は、蒸らしで必要な最低限のお湯を使用するイメージで分量の調整することがポイント。

まとめ|第二弾はTDSと収率について

今回は、ハンドドリップ講座:第一弾『抽出時間フェーズごとの味の違い』をまとめてみました。

投入回数を分けることで、どこでどのような味を取り出しやすいのか、確認していただけたと思います。

挽き目や湯温はもちろんですが、何回に分けてお湯を注いでしくのかも今後着目してみると、より美味しいコーヒーを抽出しやすくなると思いますので、ぜひご家庭でも活用してみてください!

次回はコーヒーの濃度に関係する『TDSと収率』について連載予定です。お楽しみに!

WRITER

Mayuka Jimbo

THE COFFEESHOPバリスタ・ストアサブマネージャー。

富ヶ谷のロースタリーROAST WORKSにてドリンクを提供。フードペアリング担当。レシピの改善や、抽出技術の向上に日々取り組んでいる。

毎週日曜8:45〜はInstagramとYouTubeで15分間のライブ配信中!

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